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蝉の音がうるさく響く教室。昼飯の後は大概眠くなる。風に揺れる木の音が子守り歌のようにやさしく、耳に聞こえてくる。
そういえば、あの時もこんな夏の日だったっけ。俺は、ゆっくり瞼を閉じた。
「う、うぇ~ん!がえりたい!」
「だから、前のお家にはもう住まないの!今日からこの家で暮らすの!」
「いーやーだー!」
新しい家に引っ越した初日。初めて見る光景ばかり、怖くなって前の家に帰りたいと家の前で泣きじゃくってたっけ。
「もう、じゃあママ知らない!かなちゃんだけで前の家に帰りな!」
「ママぁ~~!」
泣き止まない俺に怒った母さんは俺のことを外において家に入ってった。一人ぼっちで寂しくて、その場でしゃがみこんで大声で泣いてた。
「大丈夫?」
そんな俺に話しかけてきたのはお坊っちゃまの服装の綺麗な金髪の男の子だった。
「だ、誰?」
「僕、神原 英斗。君は?」
「さ、佐藤 彼方、、、、。」
差し出された手をつかむと、英斗はグイっと俺を引っ張り上げた。同じ目線で顔を見合わせたとき思ったんだ。綺麗な顔をしているなって。それが、英斗と初めて会った時の第一印象だった。今じゃ、あんなんだけど、、、。
英斗は、俺の隣の豪邸に住んでた。近所だからいつも二人で遊んでいたな。
そういえば、それが原因で、俺がαの子にいじめられたことがあった。βの俺が、αの英斗と仲良くしているのが感に触ったらしい。
あの時は、英斗が助けてくれた。そのあとは、、、、、、、
「佐藤!」
「はい!」
教師の大声で顔を上げる。教師の顔を恐る恐る見ると、それはそれはとてもお怒りだった。や、やべぇ。寝ちまってた。
「今日お前の課題、倍にしてやるからな、、。」
低音ボイスで睨みつける教師に俺は「ふぁい、、。」という返事しかできなかった。
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