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「そ、そんなわけないじゃん」
「だよねー。もしそうだったら結構引いたわ~」
そうか、言ったら引くのか、、、。てか、引くかもしれないなら聞くなよ。こいつ、ひとの気も知らないで、、。謎に苛立っていた俺は、こんなことを口走ってしまった。
「どーせ、あの時のことだって、、、。」
「え?」
「あ、、、。」
俺は、まずいと思った。思っていたことが口に出ていた。英斗は一度興味を持ったら聞くまでしつこい。
「かなた。あの時ってな~に?」
ほら、言わんこっちゃない。見事に食いついてきやがった。う~、どうしよう。
「ほーら、かなた、白状しろ!」
「ちょ!くすぐるな!ひー、あはは、分かった、話す話す!」
英斗はくすぐるのをやめ俺の正面に座った。俺もつられてきちんと座りなおした。胸がドクンドクンうるさい。
「お、俺、小学の頃いじめられてただろ、、、。」
「うん」
俺は、一呼吸おいて話を続けた。
「英斗が助けてくれた時あっただろ、その後の帰り道であったこと、覚えてる?」
だんだんとその時のことを思い出して恥ずかしくなってきた。英斗の顔をちらっと見ると、うーんと腕を組んで思い出そうとしていた。数秒後、ぽんっと英斗は手を叩いた。
「お、思い出したのか?」
「いーや、もうそんな昔のこと覚えてないや、で、その時なにがあったの」
へらっと笑う英斗に俺は何かが、プツンと切れた。
ああ、あの時のことは英斗にとってちっぽけなことだったんだな。その思い出を大事にして英斗を思い続けている俺って、なんて、しょーもないんだろう。相手は、これっぱっちも覚えてないのに、、、。俺と英斗のいる空間が全く別物に感じてきた。
「か、かなた!どうしたの」
英斗が驚いた顔をしている。頬に冷たいものが流れるのが分かった。その冷たさは、深く深く俺の中に浸透していった。どうしよう、、。あふれ出てくる。
「もう、いい」
「か、かなた?」
「英斗の、バカ」
気が付けば、俺は英斗の家を飛び出していた。叶わないと知っていたのに、期待した自分が恥ずかしい。急ぎ足で自分の部屋に向かい、ベットに顏を埋め込む。
涙が止まらない。俺はあの時のことを思い出しながら、明かりのない部屋で静かに泣いた。
もう、今日でこの恋は終わりにしよう、凍った心に俺は深く誓った。
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