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俺だけが覚えている過去
「お前さぁ、雑魚のβのくせに調子乗りすぎなんだよね」
俺の頭に蹴りを入れたそいつは、笑いながら言う。俺が、何したっていうんだよ。声にならないその言葉を頭の中で繰り返す。もう何発くらい殴られただろうか、痛みで何も感じない。
「英、斗、、、。」
数週間前。
あ、英斗だ。
廊下では、英斗が誰かと話していた。あれって、、たしか。誰もが振り返る美しい容姿、愛らしい笑顔。で有名な神崎くんだっけ。たしか、英斗と同じαだった、、。
「あ」
かなり二人を見ていたのか、英斗と目があった。俺がさっと目をそらし教室に戻ろうとすると、
「かーなたー!」
英斗が俺の方に来ていた。話していた神崎君だけがポツンと残されている。
「お前、話してた途中じゃねーのかよ」
「だーいじょうぶ。俺には関係ない話だから、。」
と言い、英斗は笑顔で神崎くんの方をちらっと見た。
神崎くんはにこりと笑顔を向けると俺達に向かって歩いてきた。
「やぁ、僕、神崎 優士。君、名前は?」
と、天使のような眩しい笑顔で言う。てか、え?この人俺に話しかけてんの?相手の視線は俺に向かっているから、俺に言ったのは分かるけど何故?
「あ、えっと、佐藤 彼方、です、、、。」
英斗ぐらいとしかまともに話したことのない俺は、小さく答えた。そんな俺を見て、隣の英斗は吹き出す寸前の顔である。英斗のやろう、後で覚えてろよ、、。
「佐藤くん、君、英斗くんと仲良いの?」
「え?あ、まぁ一応幼馴染みだ、から」
というか、そんな事聞いて何の意味があるんだ?神崎くんは英斗と話したいんじゃ、、、。
神崎くんは、なにか考えるように顎に手をおきなにか呟いたが、うまく聞き取れなかった。
「うん、ありがとう、佐藤くん。それじゃあ、英斗くん、また、話そうね。」
というと、神崎くんは言ってしまった。なんだか、俺の苦手なタイプだな、、、。
「かなた」
英斗が小声で囁いた。
「なんだよ。ふん、いつでも準備はできてるぜ」
俺は、自分の指の関節をパキパキ鳴らした。
「そうじゃなくて」
「へ?」
あまりにも英斗が真剣な顔なので、驚いてしまった。どこか、焦っているようにも見える
「神崎には、これ以上かかわるなよ」
「?わ、わかった、、。」
どうして関わっちゃダメなのか聞きたかったが、予鈴がなってしまい聞き出せなかった。まぁ、でも神崎くんはちょっと苦手だし、関わるってことはないか。
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