弐章/翼と角と翁

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「そっか、ルナは飼い主さんから盗まれたんだな」 「ケイコちゃん……元気かな……」  ルナは元々ニンゲンに飼われていて、モンスター泥棒に盗まれた後、ここに逃げてきたという訳らしかった。そもそも、というのも気に食わなかった。 「ルナが生きていればきっと何処かで会えるさ。その為にも、俺と一緒に人間の国を目指さないか?」 「タキザワと一緒に……?うん、いいよ。ならワイヴァーン様に言わなきゃ……」 「あー……あの緑の龍だな?出来れば会いたくないけど……」  こちらの言葉も聞かず、問答無用で吹き飛ばした恨みはまだ残ってている。 「ま、1発くらい殴っても問題ないよな」  The 蛮族である。 「そういえば、来る時に美味しそうなリンゴを見つけたの。持ってくるね」 「おう、気を付けてな」  ルナは今度は木刀ではなく果実を持ってくる為に再び森の中へと戻っていった。彼ら彼女ら、入れ替わりが激しい。 「ち、血……」  荒い息遣いで起き上がった騎士が背後からフラフラと滝澤に迫っていた。ルナとの会話に夢中になっているこの阿呆はまだ気付いていない。 「血を寄越せぇッ!」 「おぉうっ!?」  肩を掴まれて変な声が出た滝澤。しかし、騎士は鎧姿なので滝澤に噛み付く事が出来なかった。 「離せいっ!」  滝澤は騎士を振り解く。これが某サバイバルホラーゲームでゾンビに噛まれそうになる主人公の気持ちか… 「血が要る……ニンゲンの血が……」 「そっか、お前ヴァンパイアか!す、吸うのは良いけど死なないよな!?」 「もちろん、少量で足りる。だから早く……」  騎士は鎧兜に急いで手を掛ける。その下から現れたのは黒髪赤眼の美少女の顔だった。血に飢えた形相である事を除けば。 「……っ!(か、可愛……)いたぁいッ!」  見蕩れていた滝澤の首筋に騎士が噛み付いた。そのままチュウチュウと血液が吸われていく。注射嫌い。 「……ふぅ。悪いな、これで暫くは大丈夫だ」  吸血を終えた騎士は滝澤から離れ、脱いだ鎧兜を手に取る。 「へぇ……あんた、女の人だったんだな」 「……あ」 「あ?」  鎧兜を取り落とした騎士は真っ赤になった顔を両手で覆う。 「みみみ見たなッ!わ、私の顔を……!」 「自分から見せたじゃん」
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