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「ホント、湊が居なけりゃ俺は筋トレと剣道しか能がない人間になってたよ」
「そんなことないと思うけどなぁ」
「いや、湊にラノベを教えて貰わなかったらどっかで詰まってたと思う。ラノベのおかげで越えられた壁が確かにあった。うん」
拳をぐっと握りしめ、月を眺めた。瞬時に湊はそれが何の作品のパロディであるかを答えた。
「はは。湊には敵わないな」
「私も空佐には敵わないよ。お互い、最強」
湊は滝澤に向けて拳を突き出す。滝澤もそれが何のシーンか答えつつ拳を合わせる。それから、二人で薄い雲に覆われた月を眺める。
「……もしさ、異世界に行けるってなったら空佐は何する?」
先に切り出したのは湊だった。意趣返しである。
「ふふふ……良くぞ聞いてくれた。俺はな、まずハーレムを作る!」
一切の逡巡無く滝澤は言い放った。
「は、ハーレム!?」
「そう、ハーレム。転生=無双が基本だろ!?だから、その俺TUEEE!!的な力で転生先の世界の女の子を奥さんにしてウハウハ……みたい……な……」
話しながら湊の冷たい視線に気がついた滝澤はどんどん声が小さくなっていった。
「本気で言ってる?」
「も、もちろん異世界転生なんて有り得ないからな。ifの話だ」
「そっか。(否定はしないんだ……)」
「……けど、もし転生するんだったら湊も一緒に行けたらいいよな。お前が居れば、何処へ行っても大丈夫な気がするんだ」
滝澤は最も信頼している友人に本音を込めて、無邪気に笑いかけた。
「そ、それって告白なんじゃ……」
震え声で呟いた湊の顔が漫画のようにみるみる朱に染まっていく。
「……?顔赤いけど、大丈夫か?」
「ううん、何でもないよ。気にしないで」
「それならいいけど……風邪には気を付けろよ?最近寒いからな。空は綺麗だけど」
滝澤は星の散りばめられた空に再び視線を向ける。
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