弐章/翼と角と翁

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「んで、雨か……」  先程までは雲一つない晴天だったが、滝澤が「こんだけ晴れてるならこの先安泰だな!」と口走った瞬間に激しい雨が降り出したのだった。これは流石に不安すぎる。 「これじゃ動けないわね……ちょっと待ってなさいよ」  そう言ったナスカは土の手を雨避けにしながら森の奥へと駆けていった。一人残された滝澤は物思いに耽る。 「(俺はこの世界に来てすぐに魔王になるなんて言っちまったけど、元の世界に戻る方法も見つけなきゃいけない訳だよな。喚ばれたからにはまず魔王になるしかないが)」  考えれば考える程こんがらがってくる。問題は山積みだ。その幾つかは滝澤が原因だが。 「滝澤、これ使って!」  息を切らしながら走ってきたナスカの手には二本の大きな葉の付いた植物の茎が握られていた。ト〇ロのアレである。 「何これ?漫画やアニメでよく見るけど」 「リントヴルームって言うのよ。これなら雨に当たらなくて済むわ」  思ったより強そうな名前をしていた。
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