弐章/翼と角と翁

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 降りしきる雨の中、二人は森の中を進む。 「川とか凄いんだろうな……」  ふと川を横目に見た滝澤。その目に一瞬人影のようなものが写った。 「あそこ、誰か溺れてないか!?」 「え!?違うってあれは!」  ナスカの静止を振り払った滝澤は荷物と脱いだ上着をその場に傘ごと落とし、川の中へと飛び込んだ。 「この川!見た目より汚いぞ!?飛び込まなきゃ良かったかも……!」  後悔してももう遅い。救うと決めたら救うのだ。濁流の中を進む滝澤はなんとか人影の下まで辿り着いた。 「もう大丈夫だぞ……って木ぃ!?待って、この川思ったよりふk……」  ちらりと親指を立てた手が見えたが最後、滝澤の姿は抱き寄せた木と共に濁流に呑み込まれて見えなくなった。 「たーきーざーわー!!」  ナスカの叫びが森の中に木霊した。
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