弐章/翼と角と翁

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「オエェ……気持ちわりぃ……」  滝澤が目覚めたのは川辺の大きな平たい石の上。近くには誰も居ない。 「うーん、またかぁ……」  転生時と似たような状況にゲンナリする滝澤。どうやら別の世界ではなく、ただ川に流されて来ただけのようだ。その証拠に川岸にあの人っぽい木が引っ掛かっている。 「助けてくれたのはナスカか?その割には随分流されたみたいだけど……」  川幅の太さの違いからかなり下流に来たことが分かる。 「起きた?」  バサバサという翼の音が聞こえて滝澤が上を見上げると、枝の上に白髪の少女が立っていた。それも、ハーピィの。 「や、やぁ……(か、カワイイ!仲間にすべきだ!そう、今すぐに!)」  滾る下心を抑えて少女を見つめる滝澤。少女の方も滝澤を見つめ返した。 「お腹空いた?」 「なんでそうなる!?確かに空いてるけど……」  少女は独特の思考回路を持っているようで、滝澤の返答を聴くと再び森の奥へと飛んでいった。 「なんだかよく分からないけど、あの子は俺を警戒して無かったな。やっぱりモンスターにも人間嫌いじゃないやつがいるんだな」  などと安堵していた滝澤のすぐ近くから重々しい足音が聞こえてくる。 「今度は何だ……!?」  滝澤は近くの岩陰に身を隠した。
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