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「ガラス、どうする……?」
獣人は素早く女性の傍へ跳んだ。
「その男が助っ人と言うのなら私は別に構わない。ラムゼ、準備はいい?」
「当然。一人でも二人でも構わないぜ」
獣人は改めて滝澤に狙いをつける。木刀のない滝澤、大ピンチ。
「お、俺はどうすれば……」
「お前ほどの手練ならば自己防衛くらいは出来るだろう。獣人、お前の相手は私だ」
騎士はラムゼに向かって剣を構えた。一瞬時が止まったような静寂が訪れ、次の瞬間には滝澤そっちのけで激しい攻防戦が始まった。
「腕を上げたなヴァンパイアッ……!」
「剣士だからな、一昨日と同じだと思うな!」
堅い爪を剣が弾き、素早い剣を爪がいなす。互いに一歩も譲らない闘いに、滝澤置いてけぼり。
「あれ?俺が主役だよね……?」
もしかしたら違うかもね。何か出来る事は無いかと辺りを見回す滝澤。
ラムゼの主であるガラスは、木の上から何かを叫んでいた。しかし、その声は高すぎて滝澤には聴こえない。
「(そうか、ケモ耳特権で聞こえんだな、あの声が……)」
獣人特有の聴覚を利用した戦術。実に見事である。ならば自分は……と滝澤は落ちている木の枝と枯れ葉を拾い集めた。
「滝澤流火起こし術(滝澤命名)……!」
原始的な方法で焚き火をする滝澤。獣人の敏感な鼻が煙を感知する。
「うっ……臭ぇ!なんだこの匂いは……」
よろめいたラムゼは騎士に蹴飛ばされた。滝澤君、これは嫌がらせ合戦ではないんですが。
「ラムゼ、大丈夫!?おい男、何をした!」
「チョット寒カッタンデ火点ケタダケッスヨー」
わざとらしいカタコトで答える滝澤。自分を主役だと思っているなら何故こんな好感度の下がる行いを繰り返すのか……。
「大丈夫だガラス、まだ戦える。それに、この匂いにももう慣れた」
獣人は再び騎士に襲いかかる。今度の猛攻を捌き切れなかった騎士は胴に強烈な一撃を喰らってしまった。
「くっ……!」
「今度はこっちの番だぜ」
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