弐章/翼と角と翁

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 迫る獣人、動かない騎士。このまま傍観していたり、逃げ出したら間違いなく滝澤を介抱したあの騎士は死ぬ。  だが、今の滝澤は丸腰。鋭い爪を持った獣人には到底敵いそうになかった。 「でもまぁ、自己防衛のうちと考えて」  滝澤は獣人の前に立ちはだかる。 「退いてろよニンゲン。小生意気なヴァンパイアを殺すんだよ」 「ただの恩返しだ。殺すなら俺からにするんだな」  滝澤に勝てる自信はない。恒例のハッタリだ。だが、その一瞬が滝澤と騎士を救った。 「わーすーれーもーのー!」  ハーピィの少女が木刀を抱えて飛んできた。そして泉の前での戦闘時と同じように木刀が滝澤の手中に収まった。 「ありがとな。えっと……」 「……ルナ。ルナだよ」 「ありがとなルナ!これで戦えるぜ!」  滝澤は獣人に木刀を向ける。その肉体には先程とは違ったオーラのようなものが宿っていた。 「ラムゼ、下がって!その剣……確実に神通力を持ってるわ。今闘うのは危険よ!」  女性の命令で獣人は滝澤の前から飛び退いた。 「チッ……じゃあなヴァンパイア!次に会った時は確実に殺すからなッ!」  女性と獣人は滝澤を警戒しながら森の中へと姿を消した。滝澤としては闘わなくて済んだので万々歳である。 「この人、だぁれ?」 「命の恩人だ。多分だけど。ルナ、起きるまで様子を見ていようか」  滝澤とルナは騎士の傍に座り、互いの事を話し始めた。
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