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「……さて。そろそろ来る頃か。湊、どっか隠れてな」
「えっ……!?」
言うが早いか、道場の前に黒塗りの高級車が数台止まった。立ち上がった滝澤は壁に掛けてあった専用の木刀を握る。ぞろぞろと降りてきたガタイの良い男達を見て湊は絶句する。
「今日は随分と人数が多いじゃんか。サッカーでもやるか?」
「じゃかぁしい。さっさとこの土地空けんかいっちゅう話や。前回は油断したが今日はそうはいかんで」
先頭に立っていた強面の男が拳を打ち付けた。彼らこそ大垣篤志を暴行し病院送りにした悪質な地上げ屋だった。しかし、すでにその何人かの顔には殴打の痕があった。明らかに滝澤のものである。
「(あんな大人数を相手に一人で……それも叔父さんのために……)」
ロッカーの中で両手を合わせ、滝澤の勝利を祈る湊。それを一瞥することなく無言で木刀を構える滝澤。
「何かYah……!」
既に滝澤は戦闘態勢に入っていたのだ。今度も男は油断していた。
下腹部を突かれた男は体勢を崩す。滝澤はノータイムでそのまま下から蹴りを入れた。後ろの数人を巻き込んで男は泡を吹いて倒れる。
「次」
挑発する滝澤の目に色は無かった。ただ、倒すのみ。今の彼はまさしく戦闘狂であった。
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