弐章/翼と角と翁

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 テッテレー!ヴィルとルナが仲間になった! 「そういや、さっきの奴らは?」 「アイツらとは過去に一度戦っていてな。ここでの再戦を私が申し込んだんだ。巻き込んですまなかったな」 「いや、構わないさ。俺もヴィルに助けて貰ったんだし」  滝澤は茶化した笑いを見せる。一度剣を振るわれた事は忘れているようだった。 「リンゴ持ってきたよー」  ルナが大量のリンゴを抱えて歩いてきた。 「お、こんなにいっぱい……!ありがとなルナ」  滝澤がルナの頭を撫でると、ルナはとても明るい笑顔を見せた。きっと人肌が恋しかったのだろう。 「うん。あ、ヴィル姉ちゃん起きたんだ」 「2人は知り合いか。なら話は早い。ルナもさっき仲間になったんだ」 「つまり養子と……」 「分かった、もうどんな解釈でも良い」  ヴィルはゆらりと滝澤に歩み寄った。 「すまん、もうちょっと血が要る」  そのままカプリと滝澤の首筋に噛み付く。2回目なので痛みには慣れたが、今回は後ろにルナがいる。 「お、おい……これ絶対教育に悪いって!」  滝澤はモンスターとはいえ小さな子供のいる前での吸血に罪悪感を覚える。ヴァンパイアであるヴィルは自然に行うが、ハーピィであるルナが真似したらどうするのだ。 「ひはははいはほう。ははしはひひふはへひひふよふはふははは。(特別翻訳:仕方ないだろう。私が生きるために必要なんだから)」 「何言ってるか分からん。せめてルナに見えないところでしよう」  ヴィルを力ずくで引き剥がし、距離をとる。ヴィルの表情は不満げだが、ルナの為にも滝澤はこうするべきだった。 「二人とも、何してたの?」 「栄養補きゅ……」 「ややこしくなるから黙ってろ。ヴィルがふらついたから俺が支えただけ。ただそれだけ」  どうやらヴィルは滝澤ですら困らせるようだ。これはかなり稀有な存在なのではないか。
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