弐章/翼と角と翁

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「成り行きで決闘受けちゃったけど、どうしよ……」 「何も考えていなかったのか……」  滝澤はNoと言えない日本人だ。特に理由が無ければ断らない。 「それは後で考えるとしてもう陽も沈みかけているから寝られる場所を探さないと……」 「それなら私に任せておけ。簡易結界くらいなら作れる」  得意げに笑ったヴィルは木の枝を地面に刺した。そのまま真っ直ぐ行った先の地面にも刺す。これを四箇所行い、その中央に剣を刺した。 「簡易結界・アロンダイト!」  剣の柄から伸びた光の線が木の枝へと伸び、ピラミッドのような形を作り出した。 「はえー……すっごい。その剣、秘宝みたいなものなのか?」  よくよく見ればヴィルの剣は一切の光沢が無く、見ていると純黒に吸い込まれてしまいそうだ。 「そんな所だ。……この結界の中にいる間は低俗な輩共に襲われないことだけは保証しよう」  そう言いつつもヴィルの表情には影が差していたが、滝澤が気に留めることは無かった。 「ルナ、剣には触るな。長い事見てると飲まれるからな」  虚ろな目で剣に触れようとするルナをヴィルが取り押さえる。それでもルナの手(翼)は剣に向けて伸びていた。 「そんな危険な物を野ざらしにしておくなよ……!」  滝澤が急いで脱いだ肌着を剣にかけるとルナはようやくその場に腰を下ろした。 「ルナ、この剣には明日まで触るな。いいか、俺との約束だぞ」  上半身裸の滝澤がルナの肩を掴む。ルナは頷いているが、見ようによっては明らかに不審者が幼女を連れ去ろうとしているようにも見える。
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