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陽はすっかり沈み、辺りも暗くなってしまったが、結界の力なのか、滝澤達の周りだけはほんのりと明るかった。
「脱いだはいいけど寒くなってきたな。焚き火でも起こすか」
滝澤はテレビのサバイバル系番組で見たように植物と枝を使って火を起こそうとする。
「アチチチ……!こんなん無理……!火がつく前に摩擦で俺の手が焼けるわ!」
中々産まれない火種に早くも音を上げた滝澤は地面に大の字になって寝転がる。と、その前に剣や鎧の整備をしていた筈のヴィルが立った。
「何をやっているんだ」
「火を起こそうと思ったんだけど、俺でも無理だわ」
「そういう事なら早く言え。魔導火打ち石があると言うのに」
ヴィルは鎧の中から小さな2つの赤い石を取り出すと、それらを積まれた植物の上で擦り合わせた。
すると、植物の上で小さな火が生まれ、メラメラと炎を燃やし始めた。
「そんな便利なものあるなら早く教えてよー!」
「聞いてこなかっただろう。まったく……滝澤は不器用なんだな」
ヴィルの茶化すような笑いを見て滝澤はムッとしたが、大して言い返せるようなことも無い。大人しく焚き火の前に座った。
「あー希望の炎だー」
恍惚とした表情を浮かべ、暖を取る滝澤。
「そうでもないぞ。灯りがあるということは当然、虫を呼び寄せる」
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