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1 オジサン、動きます
――――――――オジサンね…………ゲイなんだよ――――――――
は?
日が沈み暗がりが目立つ公園のベンチで、学校の部活をサボり、スマホゲームの10連ガチャを回していた俺は、ガチャの連打を止めて、そよ風のように隣に座って来た、やたらギラついた肌の黒いオジサンを見た。
丸坊主の頭は油でテカリ、黒真珠のような輝きを放っている。
いつもガチャの時は、この世界の命運がかかってると思いながら、外界の声も音もシャットダウンして、スマホ画面へ釘付けになるのが、今日ばかりは目を離してきまう。
たっぷり間を使って、見ず知らずの高校生に、こんなイカれた暴露をするのだ。
絶対ヤバイ奴だ。
オジサンは夕日を愛おしく見つめながら、哀愁が口から溢れ落ちるように、小さく語りかけた。
「僕は今から……君を襲うけど、いいかな?」
何言ってんだコイツ? 健全な男子高校生を襲っていいわけねぇだろ。
頭イってんのか?
「ゲイのオジサンね。君が知らない素晴らしい"世界"があること、教えたいんだよ」
いや、そんな世界知りたくねぇよ。
俺は身の危険を感じ、ガチャを回す指を止めて、カバンを抱えると同時に駆け出した。
後ろからオジサンのつぶやきが、死神のように追いかける。
――――今、掘りにゆきます――――
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