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2 ノック
「あっ、ああ〜……間に合ったぁ〜」
トイレの個室に駆け込み、解放感と高揚感からくる幸福感を、ただ噛みしめる。
総合病院で警備員をしている俺は、夜回りの最中、唐突に襲ってきた便意に逆らうことができず、自分でも驚くほどの瞬足を覚醒させトイレに駆け込んだ。
最近、腹の調子が悪いけど、何かに当ったかな?
しかし、夜の病院は不気味だ。
気のせいだとしても、何か、不吉な気配だけを感じとった気になる。
病院と言えば学校に次ぐ、怪談話の宝庫。
今、何か"こと"が起きたら逃げられないな……。
あまり長いをしたくないと踏み、トイレレットペーパーを掴み、いそいそと尻を拭いていると、ドアの足下の隙間から黒い影が見えた。
誰か来た。
当直の看護師か?
それとも入院患者か?
ゆっくり、ゆっくりと、影は這いずるように動き、俺がはいる個室の前で止まる。
そして――――――――。
コン、コン、コン。
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