7 虫

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7 虫

 俺の脳に、虫?  そんなこと言われても、自分の脳内に虫が巣食っていたなんて、すぐには理解できない。  顔を曇らせた俺を見て、医者は丁寧に説明してくれた。 「視界が影で覆われたのは、おそらく視覚を司る神経に寄生虫が入り込み、以上をきたした"飛蚊症(ひぶんしょう)"の一つですね。虫がいるわけでもないのに、虫が見えてしまう幻覚ですが、視界が見えなくなる事例は珍しい」 「はぁ……」  話半分でしか理解出来なかった。  医者は話を進める。 「激しいノック音と耳鳴りも同じように、聴覚の神経異常からくる幻聴でしょう。今年、どこか海外へ行かれたりしましたか?」  唐突な質問に心当たりがあった。 「家族で海外旅行に、メキシコへ行きました」 「海外で生モノを口にしましたか?」   そう言われ、思い当たる節が。 「肉料理を食べた時、自分の料理だけ生焼けだったときが。ミディアムレアだと思って食べてましたね」 「中まで火が通ってなかったのですね。日本と違い海外は、よく火が通っていないと、危険ですから」  医者はさらに続ける。 「プラジカンテルという、駆逐薬が効いて虫を排除出来たので、もう大丈夫です。命に別状はありません。まぁ、強い副作用は出ますが……」  ん? 最後なんて言ったか聞き取れなかった。  医者は少年のようなイタズラ心のある人なのか、単にサイコパス的なレベルで空気が読めないのか、最後にこの寄生虫がどんな未来をもたらすか、過去の病例を記録した写真を、MRI写真の横に貼り付ける。 「うわっ!?」俺はその写真を見て、思わず声を上げた。  シワの寄り集まった脳ミソに、所々、黒い穴が空き、そこから白い糸が何本も湧いている。  一見すると、ウジの湧いたカリフラワーに見えた。
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