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「ところで陽菜は増谷さんのどこが一番好き?」
「やっぱりさ、分かり易いぐらい、私のことを『好きだ』って言葉と態度で示すところ。」
「ご馳走様です」
陽菜だって、心のどこかで忘れられない人がいるよね。
私にも、律にも、仁にも忘れられない人がいるように。。。
それはそれでいいんじゃないかと最近、思えるようになった。
「追いかけるのもいいけど、ただただ、ひたすらに愛されるのも悪くないって思えるようになった。あと優しいっていうのも大きな要素」
「それは分かるかも。優しさは大きい」
「長く一緒にいるなら、お互いを想い合うみたいな優しさは必須だってことがやっと分かってきた」
「毎日がジェットコースター的な付き合いはスリリングだけど、辛くなってくる時もあるもんね」
「確かに」
そんな他愛もない話をしながら、私は律と仁を想っていた。
多分、二人は表現の仕方は違うけど、私にはいつだって優しかったから。
「それじゃあ、今日はこの陽菜さまが凜に一つだけ魔法をかけてあげます」
「いきなり、何?」
「まぁまぁ、今日はスペシャルサービスデーってことで、特別だよ」
何を言いだすかと思えば。。。。陽菜、今日はもしかして酔ってる?
「一応聞くけど、どんな魔法?」
「それでは教えて進ぜよう。じゃ~ん、『律さんに素直になれる魔法』です。でも効果は日付が変わるまでの限定だけどねぇ」
「あと2時間しかないじゃん?律、帰ってこないよ。今日、会食だって言ってたし」
「じゃあ延長料金として、ここの飲み代を凜ちゃんが払ってください。そしてら、1時間延長出来ます」
「延長料金って、結構ふんだくるねぇ、このエセ魔法使い。まぁ、今日は陽菜のお祝いってことで奢るつもりだったからいいよ」
「よっ、太っ腹。社長夫人は違うねぇ」
「そんなこと言ってると、割り勘にするけど」
「ごちになります」
そんなことを言い合いながら、私たちの女子会はお開きになったんだ。
なんか心置きなく飲めるなんて、すごく久しぶりだった。
素直になれる魔法。。。。そんなものがあったら苦労しない。
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