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そこで、女の子はようやく目をさましましたが、汗をびっしょりとかいていました。
いつもは夢のことはすぐに忘れてしまうのに、その夢はいつまでも女の子の頭にこびりつき、はなれてくれません。
やけに記憶に残る悪夢のことが気になりましたが、それでも女の子は再び眠りにつきました。
たまたま悪夢を見てしまっただけで、次はきっとまたいつもの心地よい夢を見ることができる、女の子はそう信じています。
しかし、現実はざんこくで、何回眠りについても女の子の見る夢は悪夢ばかりでした。
あるときは真っ暗で何もないところに閉じ込められたり、あるときはおそろしい怪物がうじゃうじゃいる夢。そんな夢ばかりを見てしまいます。
夢の中の魔王と戦わなかったから、夢の世界が壊れてしまったのだろうか?
女の子はそんなふうに考えるようになりました。そして、女の子は眠るのがおそろしくなりました。
けれど、女の子にとって起きていることは眠ることよりももっとおそろしいことでした。
眠っている間はつらい現実を忘れられても、起きていたらいやでも思い出してしまうから……。
現実にも夢にも自分の居場所はない。
追い詰められた女の子は、女の子のお父さんとお母さんが眠った後にこっそりと台所にしのびこみ、包丁を手にとりました。
そして、その包丁で自分の手首を切ってしまいました。
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