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あるところに、ひどくきずついた女の子がいました。
女の子はつらい現実にぜつぼうし、あるときから一日のほとんどを眠ってすごすようになりました。
学校にも行かず、家の外にも出かけず、食べ物もほとんど口にしません。
女の子のお父さんとお母さんは、女の子のことをとても心配しましたが、無理に家の外につれ出そうとはせず、しんぼう強く女の子を見守りました。
女の子のお父さんとお母さんがどれだけ心配しても、女の子は毎日死んだように眠っていました。
女の子は見た夢をすぐに忘れてしまいますが、夢の中には女の子をきずつける人は誰もいません。
あるとき、今日もあたたかく心地よい夢を見ようと女の子は眠りにつきましたが、その日の夢はいつもとは少しちがっていました。
女の子が草原で妖精たちと遊んでいると、突然妖精は女の子に剣を渡し、これで魔王とたたかうように言いました。
夢の中にはききが迫っていて、女の子が魔王をたおしてくれないと、夢の世界がこわれてしまうと妖精は言うのです。
女の子はふるえる手で剣を受けとりましたが、魔王とたたかうなんてとてもむりだと思いました。
現実から逃げ出した自分がおそろしい魔王と戦うだなんて……。
私にはできませんと女の子が妖精に告げると、妖精の姿が変わりました。
そして、姿を変えた妖精は、じゃああなたには何ができるの?夢でも現実でもあなたは生きていない。ただ呼吸をしてるだけ。そんなのは、生きてるって言わないのよ。あなたの居場所はどこにもない。とひどくいじわるな顔で女の子に言いました。
その顔を見て、女の子は真っ青になり、ぶるぶるふるえはじめてしまいます。
姿を変えた妖精は、なんと女の子をいじめた子だったのです。
たくさんの人が女の子をきずつけ、いじめたことを思い出し、女の子は全身から汗がふきだしてきました。
……いやああああ!!もうやめて!!こないでぇ!!
女の子は大きな声で叫び、妖精からもらった剣を自分の胸に突きさしてしまいました。
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