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2. 熱血教師
2. 熱血教師
その日の放課後、担任から陸上部の吉田監督が話があるというので職員室に行った。
監督は、筋肉質でスポーツ刈りの40才位。
頬はコケ、浅黒い肌で眉は太く凄みのある顔をしている。
吉田監督は「木村君か? よく来てくれたな。ここに来て座ってくれ」
と大声で手招きした。
「監督、話って何ですか?」
監督は、机の引き出しから1枚の紙を取り出して僕の顔の前に差し出した。
「一平君、これ入部申込書だ。サインしてくれ」
「え!」僕は唖然とした。
「中学時代、短距離選手で有名だったらしいじゃないか」
監督は急に馴れ馴れしい口調になった。
「陸上はもう、辞めたんです」
僕は陸上に関心がなくなったという顔をして、監督の視線をそらした。
「もう別の部活に決めたのか? 何部だ?」
監督は身を乗り出した。
「いや、別にないですけど」
吉田監督は、合点がいかないという顔をしながら、申込用紙を机の引き出しにしまった。
が、すぐに気持ちを切り替えたかのように、自分の学生時代のクラブ活動でどんなに人間として成長したかとか、クラブの友は生涯の友だとか、延々と話し続ける。
入部を断るには呆れるような理由を言うしかないと思った。
「練習は自由にやらせてください。それでよければ入部しますけど」
僕はわざと体を斜めにし、足を組んで、生意気な口調で言ってみた。
「何だと? 何様だ! ふざけるな!」
吉田監督は顔を真っ赤にして怒鳴った。
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