僕には命より大切な人がいる【大切な恋の思い出に命を捧げた高校生の物語】1６000字

４． 表彰式

４．　表彰式

　僕は陸上部に入部すると、５月上旬に行われた高校総合体育大会地区予選を通過し、決勝大会の１００ｍ短距離で優勝した。

　２日後に表彰式が行われた。

僕は、講堂の壇上の椅子に座りながら、名前を呼ばれるのを待ちながら自問していた。
　入学早々、大恥をかいたから挽回したくて陸上に入ったのではなかった？
……ひろみと関係を修復したい？　
　僕はそのことに気づいて虚しくなった。
　ひろみには恋人がいるし、昔にもどれるはずがないからだ。

「それでは、木村一平君に挨拶をお願いします」
　司会の先生の声に押されるように、僕はひな壇に立ったが、無意識に、生徒の中にひろみがいないか探していた。
　僕がひな壇に立ったまま、なかなか挨拶をしないので、講堂内が騒がしくなった。
　僕は、生徒たちの中にひろみを見つけると、応援してくれた人たちに感謝の言葉を述べた。