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6.秀樹の怒り
6. 秀樹の怒り
昼休みに、秀樹が顔を強張ばらして教室に入って来た。
僕は、秀樹が青葉高校一番の秀才で、家も裕福だということをクラスの女子生徒から聞いていた。
「ひろみが倒れたんだ。お前に会って、昔を思い出そうとしたからだ。
絶対ひろみには近づかないでくれ。わかったな!」
秀樹は強圧的な口調で一方的に言うと、出て行った。
僕にとって大切な思い出がひろみをくるしめている。
僕は校庭を眺めながら、ひろみには会わないと誓った。
「一平君! 何、真剣な顔してるの?」
学級委員の田中美樹が肩越しに言った。
「なんでもないよ」
「そうかな。何か思いつめてる感じだけど」
「なんでもないよ。ほっといてくれ」
心の葛藤を話せるほど、彼女と親しいわけじゃない。美樹の手を払うように言葉を遮った。
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