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そういえば、部屋の窓から外を見たりしなかったな。
窓の外を見ていたら、あのツリーハウスみたいな部分もお屋敷を出ずとも見ていたろうに。ぼくの元来のひきこもり的な性質が遺憾なく発揮されてしまっていた。
窓、開けてみようかな。開けちゃダメとか言われてないし、いいよな?
窓際に近づく。
レースのカーテンもやっぱり細やかできれいですごく高価そうだ。
格子状の窓枠。鍵の金具をはずすのにすこし悩んでしまった。すくなくとも現代日本のものとはちょっと形が違う。
「あ」
窓を開けてみて、気がついた。
ぼくの割り当てられた部屋はどうやらお屋敷の裏側にあたるらしい。
大きな樹の枝と、いくつか平地に建っている家と、むこう側の森しか見えない。
これはビミョーだな。なんとも言えない。かっこいいツリーハウス部分は全然わからない。
日当たりは悪くないんだけれど。
「どうかしましたか?」
声をかけられてちょっと驚いた。
いつの間にかエメさんが戸口に立っていた。
「いえ、なんでもないです。ちょっと、窓から外を見たことがなかったなって思っただけで」
「この部屋は景色がよいとは言えませんね。もっと眺めのよい部屋に変更しますか?」
「いえいえ。とんでもないです。ここでも充分すぎですから。なんならもっと簡素な部屋にしてもらってもいいくらいです」
「おや。この部屋になにかお気に召さないところでも?」
「ち、違います。家具も備品も全部とてもきれいなので、なにか大事なものを壊したらと思うと怖いんです」
「なるほど。けれど、普通に使っていただければ大丈夫ですよ」
「ぼく、わりと粗忽なのでそこそこ不安です」
「どうしても壊したくないものはありませんから。どうぞ気持ちを楽に」
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