借り物

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「あ、いや。駄目ならいいんだ。俺もここに来たついでに・・・なんて都合のいいこと考えただけで。明後日バイト代が入るんだ。バイト代入ったらすぐに返すから」 「・・・いくらなの?」 「三万」 一人暮らしをしている私にとっての三万はかなり痛い。 家賃は実家の親が出してくれてるからまだいいが、その他は自分で支払っている。少ないバイト代の中から出す三万という金額は、「いいよ」と気軽に返事できる金額ではない。 しかも遊びのために借りたお金である。 私は考えた末 「・・・わかった」 「本当!良かった~ありがとう」 断れなかった。 好きな人が困ってるし、私を頼ってくれている。そう考えると力になりたいと思ったのだ。 その後彼は、面白い話やバイト先での失敗など色々楽しそうに話していたが、私は心から楽しめず彼に合わせて笑うだけの時間を過ごした。 泊っていくのかと思いきや、「友達の家に寄って金返さなきゃいけないから」と帰って行った。 「・・・・本当にあれでよかったのかな」 テーブルの上に二つ並んでおかれているカップを見ながら呟く。 「ピリリリリリリ」 携帯が鳴った。画面を見ると千絵からである。 「もしもし?」 「あ、ごめんお楽しみの最中。あのさ、今日先生に頼まれた資料って持ってる?」 「え?・・・ああ、あれね。持ってるよ」 「良かったぁ。悪いんだけどソレ貸してくれない?」 「いいよ。明日持って行くよ」 「サンキュー!じゃ」
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