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「あんたがこの家を出るのは寂しくなるね」
「うん」
「ま、念願の一人暮らしだ。楽しむといい。だけど、勉強の方もしっかりやらなきゃいけないよ。こっちに戻されたくないだろ?」
「うん」
(なんだ。注意事を聞かせるために呼んだのか?)
私は少しがっかりした。
「あんたにこれをあげよう」
「何?」
内心私は、いくらくれるのかしらと期待しながら祖母を見た。
祖母は立ち上がると、押し入れの方へ行き襖を開ける。何やらガサゴソと奥の方から長方形の大きな桐の箱を出してきた。
「何?その箱」
私の質問には答えず祖母は黙って箱を開け、中から可愛らしい人形を出した。
「わ~!可愛い」
それはフランス人形だった。
アイドルが着ているようなフリフリなドレスを身に着け、くりくりにパーマがかかった金髪の髪。白い顔に大きく開いたブルーの眼の下には鼻筋の通った鼻に可愛い唇。
可愛いと思ったと同時に、なぜこんなものを祖母が持っているのか不思議になり
「お祖母ちゃんこれどうしたの?買ったの?」
祖母は愛おしそうにその人形の頭を撫でながら
「前に話したことあったろ?祖母ちゃんは昔好きなアメリカさんがいたって」
「うん」
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