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「当時ね。一人だけ祖母ちゃんの気持ちを理解してくれた人がいたんだよ」
「そうなの?」
初耳である。
「祖母ちゃんの母親の姉でね。昔は女は家を守る者だと言われた時代に外でバリバリ仕事していた人なんだ。だからこそ祖母ちゃんの気持ちが分かったのかもしれないけどね。その人に貰った物なんだよ。・・・この青い目を見て寂しい気持ちを慰められたもんさ」
言葉少ない説明だったが、お祖母ちゃんの人形に対しての眼差しをを見ていると、その当時の祖母の好きな人に対してのやるせない気持ちを慰めてくれたであろうことは十分に分かった。それに余程大切にしていたらしく、古い人形にしては何処も傷んだ所はなかった。
「そんな大切な物・・・私にくれるの?」
「祖母ちゃんはこの村から出た事がないから分からないけど、都会での一人暮らし、大学生活の始まり。初めての事ばかりだろ?だからこれを、お守り代わりに持っておいで。きっと守ってくれるから」
「・・・ありがとう」
そんな思い出のある大切な人形を貰うという事に多少気が引けたが、断るのも悪いと思い受け取る事にした。
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