災い

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「一緒にって・・・彼の事?」 人形が話しただけでも恐ろしかったが、幸せ絶頂期の私に彼と離れろなんて聞き捨てならない。 「どうして?優しくてとてもいい人なのに」 「優しく接してくる輩は、最も注意すべき人間である。人の心の闇は深い」 「そ、そんな・・そんな事言ったら誰とも付き合えないじゃない。誰だって闇ぐらい持ってるわよ」 この人形が何を伝えたいのか分からなかったが、彼の事を言っていると思った私は反論した。 「一刻も早く離れた方が良い」 なんて事を言う人形だ。 突然出てきて、阿形の表情をしながら古臭い言い回しでとんでもないことを言う。私は頭に来た。 「あのね!私が誰と付き合おうと勝手でしょ?何であなたにそんなこと言われなくちゃいけないのよ。一体何なの?」 「わしは又兵衛である」 「は?またべえ?」 声だけでなく、名前までもが外見のフランス人形らしくない。 「わしの事等お主が知らなくてもいい事だ。助言は守った方が良し」 又兵衛はそう言うとふわりと浮き上がり、箪笥の上にあるフランス人形の中に吸い込まれていった。 「・・・・・なにあれ」 呆然としながら、箪笥の上にある動かないフランス人形を見ていた。
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