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憧れ
「あ~あ。一人暮らししてみたいな」
私は常々そう思っていた。
私の住んでいる所は「超」がつくほどのド田舎だ。
田舎は、他人の子供でも村の大人達みんなで気にかけ育てていくような一体感がある。そして何より、自然が多い。
基本農業で生計を立てている家庭がほとんどなので、収穫時期になると各家で取れた作物の交換が盛んに行われる。それも一種のコミュニケーションとなるのだろう。
幼い頃はそれで良かった。改まった公園などなくても子供の知恵でそれなりに遊べる。
しかし、思春期になるとそうはいかない。
住んでいる村には中学校と高校がないので、一時間近くかけて親が毎日車で送り迎えの登下校だ。
なので、学校が終わり友人と遊びに行きたくても校門を出ると親の車が待っているので遊ぶことも出来なかった。
一度親に
「友達と遊びたいから、迎えに来てほしい時電話するって事じゃ駄目?」
と聞いた事があった。
「駄目よ。送り迎えの時間でさえも大変なのに。私はあんたのタクシーじゃないの」
ぴしゃりと断られてしまった。
不満が募る。
私の両親は、この田舎で産まれ育った人だ。
二人共、村を出ようと思った事は一度もないらしい。そう言う人には、私の気持ちは分からないんだろうと思っている。
同じ年代の友達はいたが、女ではなく男なので一緒に遊ぶという事はもうなくなったいた。小さい頃とは違うのだ。
この頃からだ、私がこの村を出たいと思うようになったのは。
そんな不満を持ちながら月日が流れ、高校を卒業し都内の大学に決まったので、念願の一人暮らしをする事になった。
親と離れ一人で暮らすことに多少の不安はあったが、かねてから願っていた村を出る事。しかも一人暮らしが出来る。
私はその日を心待ちにしていた。
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