二月十六日

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 暫く処置が続き、やっと病室に入れるようになって三人で母のところに行ったが、何度も同じ行程を踏んでいた私達にも異変は感じ取れていた。  呼吸をするたびに「あー」と苦しそうな声が必ず漏れる。呼吸は等間隔でされているから、声も同じだけ出てくる。それは居たたまれない状況で本当に辛かった。一応、皆で声を掛けたがその時は母には届かなかったようだ。ずっと母の苦しみを三人で見守るのもどうかと思い、私は二人に談話室で買ってきたものを食べてくるように勧めた。娘は後ろ髪を引かれるのか迷っていたが、二人が食べ終えたら私も御飯にしたいと話したら、納得して部屋を出ていった。  二人が出ていった直後に看護師が機材をもって現れた。 「これ、ここに置いていきますね」  説明はなかったが、それは血圧のグラフと呼吸数を表示する機材だと見て分かった。血圧は高くはない。百に届かないくらいだった。これは正常な人間であれば低血圧だが、今の母なら仕方ない数値と言える。それより、そのグラフの下にある呼吸数の表示。ずっと警告音と共に赤く点滅していたのだ。でも、看護師さんが設置してくれた時からこれだったし、確認もしてから出ていったのだから私は警告音を聞きながらソワソワしながら耐えていた。  苦しいなら何とかしてあげたいし、看護師さんを呼んで何とかならないか聞きたい気持ちと闘っていた。でも、確かに警告アラームを見てから部屋を出ていった看護師。それを考えれば呼んでも意味はないのだろうと我慢していた。
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