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そして
数日後、母のお別れの会が催され、花に囲まれて母は荼毘にふされた。
病院では、看護師さんに誘われ私と娘は体を清めるのを手伝い、その後私は母に化粧を施した。闘病生活が短かったのも手伝い、母の死に顔は美しかった。数年若返ったような顔で眠る母に、娘は嬉しそうに「おばあちゃんキレイになったよ」と声を掛けていた。
葬式が終わった次の日、私は日常生活の中に居た。
二人を送り出し、ベランダで洗濯物を干す。そして、ベランダから私の部屋に入った時、私はあの血生臭い母の息を感じて驚いた。
「あれ? 居るの?」
怖くはない。臭くもない。ただ、母がそこに居るのだと思っただけ。そして、それは嬉しくもあった。
「来てる? あ、でも私は犬の散歩に行かなきゃ」
普段通り、私は母と話すみたいに一人で喋りクンクン鼻を鳴らす。やはりあの匂い。
どこにいるかは見えないけど居るのだと確信した。
「ゆっくりしていって」
私はそう母に言うとずっと待っていた犬を連れて散歩に出掛けた。
その話を学校から帰ってきた娘にすると、娘は羨ましがって家中をクンクンしながら歩いていた。
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