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いけないこと
さっきタケルに名誉棄損だなんだとのたまったくせに自分はどうだと、意識すら遠のきそうな痛みの中で恭平は思った。
「んっ、あ……ふ……ん、や、タケちゃん……っ、やっ……」
(恭平、ほら、まだ、だめだよ、我慢して)
「んぐっ……うっ……ふっ……もう、いたいよぉ……とってぇ……!」
(よし、じゃあゆっくりはずそっか。胸張って。痛いけど我慢ね)
「んいぃぃぃっ、ふぅぅぅっ……!!ひっあ、あ、あ、はぁ、はぁ、はぁ……」
痛い、痛い、痛い……!鼻の奥がツンとして涙と鼻水がじわじわ溢れ出す。それでもなおマットレスに股間を擦りつけた拍子に、ぶちんと音を立てて右胸のピンチが弾け飛んだ。
「くぅぅぅっ……!」
ひときわ痛いその瞬間を唇を噛んで堪え、震えの止まらぬ背筋を正す。そうして左胸でぶらぶら揺れつづけるピンチに恭平は指先を伸ばした。このバネを緩めさえすれば恐ろしい痛みから解放される。そう頭ではわかっていても、体はとどめの一撃を求めていた。
「ひぃっ……ひっ……いぎぃぃぃぃ……!」
ギザギザの噛み口が肉を噛み潰し、眼前に火花が飛ぶ。それからたっぷり一呼吸おいてようやく股間が湿り気を帯びた。
「はぁっ……はぁ……はぁ……いったぁ……」
洗濯バサミに嬲られた乳首は赤剥けに剥けて、表面を薄い血汁で潤ませていた。インナー越しになぞると摩擦の強い生地が皺の一本一本まで食い込んで残痛を煽る。でも、それが気持ちいい……。
妄想のなかで、タケちゃんはいつも「恭平はエッチな悪い子だね。お乳にお仕置きしてあげなきゃね」と困った顔で言う。そして恭平はといえば、いつまでもごめんなさいが言えないせいで過激さを増すお仕置きに乳首はズタズタ。にもかかわらずオチンチンはかちかち。それがこのところエッチを断り続けている理由だった。タケちゃんは優しいからいつも笑って許してくれるけど、こんなこと続けていたらそのうち見捨てられるんじゃないかと本当は不安でたまらない。なにしろ実際のタケちゃんは他人を傷つけるような真似ぜったいにしない。それどころかいつだってまっすぐで、セックスだって愛情深くて、こんな歪んだ性癖とは程遠い人間だ。擦り傷とカサブタを繰り返す醜い胸を見たら、きっと気味悪がって軽蔑される。それがなにより怖かった。
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