絶望の夜と出会い

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朝食を済ませてしばらくすると、少女と一緒に青年が部屋に入ってきた。 柚子が警戒して老婆の後ろに隠れると、青年は大きく肩を落とした。 青年は老婆に何事かを言われると、ショックを受けた様に部屋から出て行ったのだった。 柚子が老婆の後ろから出てくると、老婆と少女は柚子を心配そうに見てきた。 心配されていると思った柚子は、大丈夫という意味を込めて何度か頷くと、小さく笑ったのだった。 柚子が食べ終えた食器を持って、部屋から出て行く二人を柚子は扉近くまで見送った。 その後、ベッド近くまで戻ってくると、部屋の窓から青年が屋敷から出る姿が見えた。 黒髪を後ろで一つにまとめた青年は、窓下に広がる庭園を抜けて、門前に停めている馬車に乗り込んだ。 すると、馬車は音を立てながら、そのまま真っ直ぐ走り去って行ったのだった。 青年を見送った柚子は、ベッドに腰掛けると天井を見上げた。 (ここはどこなんだろう? 部屋で寝ていたはずなのにどうして……?) 柚子は身体を見下ろした。老婆に着せてもらったワンピースと朝食を食べている間に用意してもらったオレンジ色のフワフワしたスリッパ、そうして青年が乗って行った馬車。 どれも柚子が住んでいた日本には無かったものだった。 柚子は試しに頬をつねってみた。 昨夜の床の冷たい感触や、今朝のお湯の温かさからなんとなく気づいてはいたが、やはり夢ではないようだった。 (家に帰りたい……。帰りたいよ……) 柚子は膝を抱えて丸くなった。 目にはまた涙が溢れてきた。 今日は、いや、昨日から泣いてばかりいた。 柚子が鼻をグズッと鳴らすと、扉が控えめに開いた。すると、老婆と一緒に部屋から出て行った少女が、扉の陰から柚子を興味深く見つめてきたのだった。 柚子は涙を引っ込めて手招きをすると、少女はぱあっと顔を輝かせて部屋に入ってきた。 「——! ——————?」 柚子が首を傾げると、少女はまた何かを話しかけてきた。 柚子が身振り手振りで言葉がわからない事を示すと、少女は悲しそうに肩を落としたのだった。 すると、少女は走って部屋から出て行った。しばらくすると、少女は本やおもちゃを抱えて柚子の元に戻ってきた。 柚子は興味深そうに本を手に取って、パラパラと捲った。 本は絵本の様で、大きな絵と文字が書かれていた。 文字が読めない柚子が絵だけを見ていると、少女がトランプの様な掌サイズの紙の束を渡してきたのだった。 柚子が受け取ると、少女は身振り手振りで遊び方を教えてくれた。 どうやら、トランプの遊び方とほぼ同じ様だった。 二人でしばらくトランプの様なもので遊んでいると、老婆が三人分の軽食を持って部屋に入ってきた。 いつの間にか昼食の時間になった様だった。 三人でスコーンの様なものを食べ、アールグレイに似た香りの紅茶の様なものを飲んだのだった。 それから、柚子は少女に屋敷内を案内してもらった。 屋敷は二階建てとなっており、柚子の部屋は二階の最奥にあるようだった。 少女と老婆は一階の厨房脇の部屋に二人で住んでいるらしい。 それから、庭を案内してもらっていると、老婆が少女を迎えに来たのだった。 「—————! ——————!」 何事かを老婆に言われた少女は、肩を落として屋敷へと戻って行った。 柚子も二人の後に続いて、屋敷の中へと戻ったのだった。 部屋に戻ると、老婆が絵本を大量に持ってきてくれた。 柚子は手振りで感謝の気持ちを伝えると、老婆は嬉しそうに去って行ったのだった。 それから、柚子は絵本を読んで時間を潰した。 ソファーに座って読んでいる内に、昨夜の疲れが出たのか、緊張の糸が緩んでしまったのか、柚子は本を持ったまま、眠ってしまったのだった。
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