私が召喚された理由

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私が召喚された理由

朝、アズールスは鳥のさえずりで、目を覚ました。 ゆっくり目を開け、だんだん頭がハッキリしてくると、そこが自室ではなく、最近、毎晩寝ている柚子の部屋だと気づいた。 そうして、アズールスは自分が寝るまで腕の中にいたはずの柚子の姿が居ない事に気がついた。 「ユズ……」 昨夜は柚子に怖い思いをさせてしまった。 たまたま、アズールスの職場まで知らせてくれる者がいたから良かった。 だが、もし、誰も知らせてくなかったらーー。 そこまで考えて、アズールスは頭を振った。考えるのは止めよう。湯を浴びて、柚子の顔を見たら安心するはずだ。 アズールスは上半身を起こす。 胸まで無造作に伸ばしている髪をワシャワシャと掻いていると、軽やかな声を掛けられた。 「おはようございます」 声の主は、書き物机の側にある鏡台ーーアズールスが柚子に贈った、の前から聞こえてきた。 アズールスに背を向けて座る、この国では珍しい肩まで伸びた黒髪の女性からだった。 「ああ、おはよう」 「お先にお湯を頂きました。アズールスさんの分もあります。温かい内に使って下さい」 黒髪の女性ーー柚子は、鏡を見ながら髪を梳かしていた手を止めて、身振り手振りでも伝えてきた。 (大丈夫そうだな) アズールスはそんな柚子の姿に、安堵したのだった。 「ああ、そうしよう……」 そこまで言って、アズールスは気づく。 アズールスと同じように柚子も気づいたようで、後ろを振り返りながら、髪と同じ色の黒色の両目を大きく見開いて、愕然としてアズールスを見つめてきた。 「言葉が、通じている!?」 二人が叫んだのとほぼ同時に、部屋の扉が開く。 「おはようございます! 旦那様、ユズ様……」 部屋に入ってきた少女を、愕然とした表情のまま二人は見つめる。 そんな二人から見つめられた少女は、不思議そうに首を傾げたのだった。
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