所詮、僕らは野狗子に喰われたのだから

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 お盆になればさすがに高校の夏期講義もなく。数種間、狗巻と会うことはなくなるだろう。そんな、ことを考えていた。盆休み前最後の下校。狗巻は同じ電車から降りてこなかった。登校は一緒に行ったし、学校には行っているはずだった。  買い物でもあって、別の駅に降りたかなと久しぶりに一人で下校した。そう、久しぶり。こんな日はめったになく、どことなく不安になる。彼女のことばかり考えてしまう。  家に返ってもそれは同じで、いっそ携帯から連絡でも送ろうかと思ってしまう。それほど珍しいことでもあったが、さすがに彼女にとって僕はなんでもない。そんなに心配することでもないはずだ。  そんな風に落ち着かずに、いると。いつかのごとくインターホンが鳴った。窓から確認することもせず、僕はドアまで急ぎ玄関を開けた。  予想通りそこには狗巻がいた。家の中に夏の暑さが入ってくる。空は晴天。雨が降る気配なんてない。それに、彼女は制服だった。今、学校帰りということだろう。  こんなド田舎の駅に快速が止まるはずもなく、そもそも途中で乗り換えが必要になる。だから一度帰りの電車を逃すと、最悪一時間遅くなることがあるのがここだ。だから、いつも連絡もなしに同じ電車で降りることができていた。  何かしらあって、学校に残っていたのかもしれない。それは、胸に手をおいて不安そうな表情をみせる彼女をみてもハッキリとわかる。その表情はほんのりと朱く。また、出会ったときのような薄さが蘇って、まるで和紙に朱色が広がったような綺麗さがあった。  その赤さは決して夏の暑さにやられたのもではないのだろう。 「どうしよ、私・・・・・・」  まるで何かに絶望したよう彼女は言葉を漏らした。 「中に入る? さすがに暑いだろ」 「・・・・・・うん」  冷たい麦茶を飲み干した彼女は言いにくそうに、空のコップに指を這わす。 「あのね、私。・・・・・・告白されたの」
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