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「キーヌぅー!!」
失礼します、と電話を切ると、ジェットが突拍子もなく俺の頭をわしゃわしゃと毛繕いしてきた。
「わっ、な、何だよっ」
「やったじゃんか! 明日に面接だって?!」
「それは、そうだけど……」
ジェットにだって聞こえていたはずだ。相手の、落胆したような声。期待外れだ、っていうような溜め息。
けど、それでもジェットは俺を毛繕いしてくれた。
──何となくだけど、その意味が伝わってきた。俺はきっと、今までの事で落ち込んでいる場合じゃない。
「昔の事を後悔するのはいいけど、先にまで引きずるなよな。何も夢に挑戦できるのは一度だけって決められてるわけじゃない。
それよりまずは、今踏み出せた大きな一歩のお祝いだ!」
「……うん、うん! ありがとう、兄弟!
それもジェットが俺の背中を──いや、電話機のボタンを押してくれたお陰だ!」
どちらとなく、違う形の手を繋いだ。
俺はきっとジェットみたいに、大胆な行動は取れない。だから今の自分には、ジェットが必要だ。
……ジェットにとって自分は必要なのかどうかはわからない。けれどジェットは、嘘はついていないと思う。そう信じられる。
だから今の自分にできることは、ジェットの力を借りて、明日の面接で目一杯努力してくる事。
「って、ジェット。もうお昼の休憩終わりじゃない?」
「え? …………うわ、マジだ! ごめん戻る!!」
それと、本物のジェット機みたいに飛んでいくジェットを見守る事かな。ジェットにはこういう面では、俺が必要なのかもしれない。
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