I'm not "ARAIGUMA"

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I'm not "ARAIGUMA"

納得がいかない。 この仕事を自分で選んだという事はわかっている。仕事内容についての文句はない。ただ衣類を洗うだけだ。精々、手先が荒れるくらいのことだ。 幸いにもここは大きなクリーニング会社なので、もしも今やっている衣類担当に嫌気が差したとしても、建物清掃や医療現場の仕事がある。相談すれば異動させてもらえるだろう。 仕事仲間との関係もまぁ、大きな問題はない。元々集団行動には慣れている方なので、余程の曲者(くせもの)でも居ない限りは大丈夫だろう。 ただ明らかに、俺について誤解をされているのが気にくわない。譲れないところなのだ。 そう思っていたら、仕事の手が止まっていたらしい。上司が嫌味な笑顔でズンズンと近付いてくる。 「どうしたんだね、キーヌ君。手が止まってるぞ? それにしみったれた顔をして、洗剤が目に入ってしみたか?」 「……大丈夫です、すみません」 「ならしっかり頼むよ。洗い残しがあったとなっちゃあ、アライグマ(・・・・・)の名が(すた)るってものだ」 そう、俺はどうもアライグマだと勘違いされている。面接の時にもこの上司にいくら説明したところで、ジョークだと思われて終わった。 あぁくそ、俺はタヌキ(・・・)だってのに。
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