5人が本棚に入れています
本棚に追加
I'm not "ARAIGUMA"
納得がいかない。
この仕事を自分で選んだという事はわかっている。仕事内容についての文句はない。ただ衣類を洗うだけだ。精々、手先が荒れるくらいのことだ。
幸いにもここは大きなクリーニング会社なので、もしも今やっている衣類担当に嫌気が差したとしても、建物清掃や医療現場の仕事がある。相談すれば異動させてもらえるだろう。
仕事仲間との関係もまぁ、大きな問題はない。元々集団行動には慣れている方なので、余程の曲者でも居ない限りは大丈夫だろう。
ただ明らかに、俺について誤解をされているのが気にくわない。譲れないところなのだ。
そう思っていたら、仕事の手が止まっていたらしい。上司が嫌味な笑顔でズンズンと近付いてくる。
「どうしたんだね、キーヌ君。手が止まってるぞ? それにしみったれた顔をして、洗剤が目に入ってしみたか?」
「……大丈夫です、すみません」
「ならしっかり頼むよ。洗い残しがあったとなっちゃあ、アライグマの名が廃るってものだ」
そう、俺はどうもアライグマだと勘違いされている。面接の時にもこの上司にいくら説明したところで、ジョークだと思われて終わった。
あぁくそ、俺はタヌキだってのに。
最初のコメントを投稿しよう!