Call and call

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マーケットは巣穴(アパート)のわりと近くにある。……それでも車を引いてくると、流石にちょっと疲れる。 ここのマーケットは人間が使っていたデパート施設を再利用したものだ。外観も内装も手入れがされているので、綺麗なまま保たれている。 「いらっしゃいませー……って、キーヌちゃん? 今日はお休みだったかしら」 入ると出迎えてくれるのは、店員のドーレルさん。犬種はラブラドールレトリバー。 同じイヌ科だからなのか、それなりに打ち解けている。あちらとしては子供か孫か、そんな感覚なんじゃないかと思う。 「こんにちは。仕事の予定だったけど、二日酔いだからお休みさせてもらったんだ」 「あらまぁ、大丈夫? それならお家で休んでいた方がいいんじゃない?」 「そうしたいのは山々なんだけど、ご飯がなくなっちゃったから仕方なく来たんだよ」 気分転換、というのもすこしある。ここには見慣れないものが沢山あるから、見てまわるだけでも楽しい。 買い物客としては、食品以外は手が届かない物がほとんどだけど。金額的にも、物理的にも。 「あら。なら消化がいいものにしておきなさいな。木の実や果物ばっかりはダメよ、お腹冷やしちゃったり消化が悪かったりするんだから」 「まぁそこは野生の勘にまかせるよ」 カートを押して、店内を見て回る。品揃えはお肉から野菜、穀物と豊富だ。 樹液だとか木片だとか、俺にはガラクタにしか見えないものまである。だけど他の誰かには必要なものなので、こうして揃っているんだろう。 適当に、そして少し多目に食品を選ぶ。折角来たんだから備蓄も買っておかないと。ついでに、アライグマが喜びそうなものも。 「ドーナツ、スナック菓子……うぅん、美味しいのかなぁ」 食べたことも食べる気もないから、どれがいいのかわからない。今度はジェットと一緒に来てもいいかもしれない。 まぁひとまずは、野生の勘で選ぼう。
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