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「……正直俺もお前の事、いけすかない新人だと思ってたよ。何だか輪から外れたがっているみたいで、非協力的っていうかな。毛色が違う気がしてたよ。
……そういえばお前、毛の色も違うんだな」
酒が残っているのか、少しトロンとした表情で遠くを見つめてそう言われた。
絶句してしまったけれど、言葉はまだ続いた。
「けどそれも、今やっと納得したよ。
あんだけアライグマだらけの中で、お前だけタヌキだったなんて。そりゃあ群れる気にもならないよな。
ましてや、アライグマだって誤解されたままなら、騙してるみたいな気分になるし」
「それは……きっとそう。納得がいかないって思ってたけど、噛み砕くとそういう事なんだと思う。考えたことなかったけど。
俺は『ジェット』には憧れているけど、タヌキなんだ。アライグマじゃなくて、タヌキの『ジェット』になりたいんだ」
細かいことを考えるのは苦手だし。だからこうして、海山越えてこんな都会まで来ちゃったわけだし。
「やっぱりすごいな、タヌキって。
……いや、きっとお前がすごいんだな」
「俺が? どうして?」
「俺はタヌキに憧れている。けど、会おうとはしなかった。こうして会えたのはホント偶然なだけで、本気じゃなかった。
けどお前は、アライグマに間違えられながらも本気で『ジェット』になろうとしてる。そういう所は、本当にすごいよ」
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