気で気を病む男

自己欺瞞 読み方 検索

自己犠牲は、汚いと思う。

犠牲になる方は気持ちが良かったり、なにも思っていなかったりするかもしれないけど、犠牲になってもらった側は死ぬまで、背負い続けなきゃいけない。この人の犠牲の元、生きているんだって。

だから、健一が当たり前だと言わんばかりに発した言葉の真意が分からなかった。

先日、健一と外食の約束をした。
最近疲れが溜まっているとぼやいたら、なにか奢ってやるよと誘われてそれにのった。でも奢るって表現が嫌だったから、誕生日の前祝いってことにしてもらった。

がっつりしたものは食べきれないし、だからと言って高級なお店も気が引ける。どうしたものかと悩んでいると、俺の考えを熟知している健一が回転寿司はどうだ、と薦めてきた。

寿司のことを考えたら二人ともすっかり寿司の口になって、すぐさま店に向かった。けれど、子連れのお母さんお父さんやお年寄りの方で満席になっているのが見えて、比較的空いてる平日にまた来ようということになった。

健一はその日を待ち望んでいて、あと五日だな、とかあと三日だな、とかって嬉しそうにカウントダウンしていた。新メニューが追加されるからか？　と思ってホームページを確認したけれど、まだ先のことだった。だから、当日になったら待ち望んでいた理由を聞こう。

……と思っていたけれど、未だに聞けずいる。