諸事情2

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危なかった……… 冷たい水で顔の火照りを治めると、盛大なため息が漏れた。洗面台の鏡に映る自分を見て、まだほんのり赤いが見れる顔になったと落ち着く。 あれは反則だ。 アラーム音で目を覚ましてみれば、目の前にあったのは彼女の横顔。キッチンへ向かう彼女を思わず引き留めてしまった。その瞬間にふわっと漂う彼女の香りに本当はそのまま抱き寄せてしまいたかった衝動をなんとか理性で抑えた。 彼女が振り向いてくれるまで、彼女に手は出さない。 昨日は思わずキスをしてしまったが、好きでもない相手からのキスなど迷惑以外の何者でも無いと冷静になって考えて、落ち込んだ。 だから、彼女が求めてくれるその日まで…。 そう心に決めたのに俺はっ! 思わず頭をくしゃくしゃと掻き回す。 寝れたと言っていたが、少し眠そうな彼女とモゴモゴとバツの悪そうな顔ですぐに嘘だとわかった。彼女は何か隠し事をする時、仕事中でもあの顔をする。その理由がこれから続く三ヶ月間の生活に絶望してなのか、俺と同じように昨日のことを思い出してなのかはわからない。しかし少し涙目になって顔を真っ赤にする彼女の様子から、後者だと願いたい。 その潤んだ瞳で俺を見上げるその姿に、再び抱きしめたい衝動が襲った。なんでこうも彼女は俺を唆るのか。無意識なんだろうけど、これではいくつ理性があっても足りない。 あぁ、これが三ヶ月続くのか…。 生殺しだな。 近くにあったタオルを取り、顔に残る水分を拭き取る。彼女が作ってくれた朝ごはん。それを思い出した途端に再び体温がヒートアップする。 冷静になれ! 俺! 今まで恋愛経験が皆無だった訳じゃない。 それなりに経験して来た。 なのにどうして彼女相手だとこんなに感情をコントロール出来ないのだろう。仕事モードじゃないと冷静になれないなんて。 どうしたんだ…。本当に。
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