諸事情1

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は?今なんと? ポカンと微動だにできない私に対し、父はさらに付け加えた。 「今まであかりの口から男の"お"の字さえ聞いたことがない。そんなお前が結婚を考えるくらいだ。一体どんな人物なのか会ってみたいと思っても不思議ではないだろう?それに、遅かれ早かれ会うことになるんだ。なぁ、母さん。あかりの婚約者に会ってみたいと思わないか?」 「ええ、ぜひ連れていらっしゃい」 「いや、でも相手にも都合が……」 「お母さん、その日の夕飯は何がいいと思う?」 「そうねぇ。外食もいいけど、お家でゆっくりご飯を食べながら二人の馴れ初めなんか聞いてみたいものね」 私の意見を完全に無視して、二人はきゃっきゃと盛り上がっている。結婚して28年経つが、私の両親はとても仲が良い。このバカップルめ…と思うことも少なくない。 こんな形になってしまったが、いつか彼を紹介しようと思っていたし…。何より、両親が喜んで迎えようとしてくれていることが嬉しかった。 付き合って1年半、彼も30歳になる。具体的に結婚の話はしていないけど、きっと彼も結婚を意識して私と付き合ってくれているはず。そう、そう思っていたのに………。 ーーーーーーーー ーーーー 「見事にフラれました」 まさにガックリ首を垂れた私に、りっこ先輩は優しく背中を撫でてくれた。やはり私にはりっこ先輩しかいない。 「先輩、私と結婚して下さい」 「いや、それは無理だから」 ぺちんという音と共におでこに衝撃が走った。りっこ先輩がダメだったら、私は一体どうしたらいいのだろう…。このまま彼氏を連れて行かなければ、お見合いさせられてしまう。ただでさえ人見知りなのに…。お見合いなんて色々な意味で死んでしまう! 「お願いです。先輩。誰か連れていかないとお見合いさせられちゃうんですよー!人助けだと思って!」 「私が行ったところで、男じゃないしね」 「大丈夫です。性別なんて関係ありません。色々な愛の形を受け入れるべきです」 「あの…オレ、男なんですけど…」 「鮫島くんは黙ってて」 あーだこーだとりっこ先輩とのやり取りに夢中になっていて、私は気が付かなかった。触れてはいけない、氷の男が近づいて来ていることを。 「いつまで休憩しているつもりなんだ?」 よく響く声。一瞬にして全てが凍りついた。
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