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んっ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!
えっ?えええっ??!!
ちょっと待って、今何が?
お?っ…えっ???
わざと「ちゅっ」とリップ音を立てて離れた課長は、顔を真っ赤にして慌てふためく私を見ると今まで見た事のない、妖艶なオーラを纏ったままニヤリと笑みを浮かべた。
「先程、君の家族に話した俺の気持ちに嘘偽りは何一つない」
「わ、私はっ」
そこまで言うと課長は私の耳元でそっと囁いた。
「君の気持ちが俺に向いてないということは、ずっと前からわかっている。だが、このままだと君の親にも怪しまれてしまう。ここは俺と話を合わせた方が得策だと思うが?」
耳にかかる課長の吐息が熱い。こんなにもドキドキと心臓が煩い。こんな状態で正常な判断が出来るはずがない。
そう思いながらも、気付けば課長の提案に首を縦に振っていた。
「じゃあ早く帰るぞ」
そう言って私の手を引くと、再び猫被り課長に早変わりした課長と共に両親の部屋に戻った。
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もうヘトヘトです。
精神的にガッツリ色々なものが削がれました。
はぁー……と盛大なため息を吐くと、
「幸せが逃げるぞ」
絶対零度な声が届いた。チラリと横に視線を移すと、メガネをくいっと人差し指で押し上げる課長がいた。本当に何も喋らないでいてくれたら…。車を運転している課長は様になっている。
無事に実家でのミッションを終えた私たちは、何故か話が勝手に進められた結果、課長の家に向かっている。荷物をまとめないといけないから、後日…と誤魔化そうとしたけど、無駄に仕事の早い妹と母によって簡単にまとめられた荷物がすでに準備されていた。そして実家暮らしをしていた私は、そのまま追い出されてしまったのだ。
うぅ…。
まさかこんなことになるなんで…。
今までこんなに近くに長時間いたことがなかったから気が付かなかったけど…課長って本当に肌もスベスベで睫毛も長い。そして唇も………
っ!!!!!!!
ボンっという音がはっきり課長にも聞こえているような気がする。瞬時に顔の温度が上昇する。
あの唇が私と…。不意に思い出してしまったさっきの出来事。わっ、わっ、私…この課長と………きっ、キスをっ。それから………
『俺の気持ちに嘘偽りは何一つない』
つまり…それは、私のことが…
そこまで考えて、プシュう…という音とともに私の頭がショートした。ダメだ。何も考えられない。考えたくない。
「さっきの話だが…」
視線を前に固定したまま、課長が口を開いた。
「加藤が俺のことを嫌っているのも、避けていたのも知っている」
「いや、嫌っているわけでは…」
「無理しなくていい」
ピシャリと言われてぐうの音も出ない。
確かに、あまり関わらないように避けてはいた。だってマイナス80℃の男ですよ?絶対零度ですよ?いつも声をかけられれば怒られて…。でも、嫌いかと言われればそうでもない。ただ、恐れてはいる。今でもこうして隣りにいると心臓がバクバクと煩い。何とも言えないこの感情は恐怖からなのか、何なのか。
「ただ…俺にチャンスをくれないか?」
いつの間にか止まった車。ハンドルに腕をかけて真っ直ぐに私を見つめるその瞳は、少し揺れているように思えた。
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