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「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」  部屋の中にあいりちゃんの声だけが木霊する。真ん中に四角のテーブルを置き、四隅に座った僕たちは皆十円玉に指を乗せている。時澤はどこか楽しそうに、花音さんは不安げに、あいりちゃんは真剣に、僕は――僕は緊張していた。 「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」  もう一度声が響く。何度もこの文言を繰り返している。あいりちゃんの額に汗が浮き始めた。机の上には白い紙がある。先ほど僕たちが作った紙だ。紙の上には鳥居と「男」と「女」、そして「はい」「いいえ」と書かれた文字の下に五十音が並んでいる。コインは初めの位置である鳥居から動かない。何度も唱え続けた呪文で頭が痛くなりそうだ。もうこのまま動かないのではないか、誰の頭にも考えが浮かんだその時。  す──  コインが動く。誰かの息を呑む音が聞こえた。  きた。 「落ち着いて、誰も指を離さないで」  あいりちゃんの囁く声が聞こえる。  寒気がする。背中に氷を入れられたような寒気。この空間に四人以外の「なにか」がいる。 「こっくりさん、こっくりさん」  一言一言区切るようにあいりちゃんは言う。 「質問にお答えいただけますか?」  コインが、動く。
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