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「人には漏らさないでっていっておいたじゃないか」
僕はため息と主にそう伝える。
「仕方ないだろう。多々家が視えるのは事実なんだから」
時澤はこういう奴だ。中学から一緒にいるがいまだに奴の考えていることがわからない。
「あの、話を進めてもいいかな」
僕と時澤は二人同時に「ごめん」といった。
「けど、そもそも『呪い』っていうのがよくわからないんだけど」
「話を聞いてくれるの?」
伊藤さんの顔が明るくなる。時澤は「ほらね」と小さく言った。
「あ、えっと。乗りかかった船だし、あと、やっぱり気になるし」
「私には妹がいるの。高校二年生、名前は優理よ」
「優理ちゃんの様子がおかしくなったのは二週間前だっけ」
時澤が口を挟む。そういえばこいつは先に話を聞いていたのだった。
「一週間前からずっと調子が悪いの。変だと思って聞いてみたけど取り合ってくれない。何も喋ってくれない。学校にも行ってないみたいで……ずっと家に引きこもってて……」
「でもそれで呪われたって思ったの?」
伊藤さんはまだ迷っているようだった。高校生ならほかに悩みだっていくらでもあるだろう。しかしそれでも「呪い」だと思ったのなら、なにか理由があるはずだ。
「うん。初めに変だなって思ったのはもっと前だったけど……一ヶ月くらい前かな? 急に優理がこう聞いてきたの。『ねぇ花音ちゃんが高校生だったときに「こっくりさん」ってあった?』て」
「こっくりさん?」
僕は思わず繰り返した。僕たちの間を、水分を含んだしけった風が通り過ぎていく。
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