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「こっくりさん、わかるよね」 「流行ってたっていうより存在は知ってた、ぐらいかな」 「実際にやった人は見たことないね」 僕の次に時澤が答える。 「もっとも、俺と多々家は同じ学校出身だから他の高校で流行っていたのなら知らないけど」 「私もそのくらいよ。だからびっくりしちゃたの。こっくりさんが流行るって、なんか……古いっていうか、イマドキじゃないっていうか」  伊藤さんは自分の言葉を自分で言って確かめているようだった。 「初めはおまじないみたいなものかなって思ったの。ほら、花占いとか、血液型とか、好きな人の名前を書いた消しゴムを使い切ったら結ばれるとか、色々あったでしょう。その一つだと思って『なにかお願いしたいことでもあるの?』って聞いたの。でも秘密だって教えてくれなかった」  伊藤さんは顔をしかめた。彼女の目の前にあるタマゴサンドはさっきから一口も減っていない。 「妹さんはこっくりさんをして、呪われたかもって?」 「私だって本当に呪われたって思っているわけではないのよ。でも、気味が悪くて。たまたま時澤くんに相談したら多々家くんのことを教えてもらえたの。ねぇ優理の話だけでも聞いてあげてくれない? このままだと取り返しのつかないことになる気がする」 「力になってあげたいのはやまやまだけど、僕には何も出来ない。ただ視えるだけなんだ。幽霊を祓うとか、呪いを跳ね返すとか専門的なことはなにも」 「それでもいいの。少しでも詳しい人に聞いてもらえれば気持ちが安定するかもしれないじゃない」 参った。これは断れない。 「いるじゃないか、専門的な人」  時澤が静かに言う。 「彼女に頼んでみれば? きっと上手くやってくれるさ」 「で、でもあの子を巻き込むのは」 「多々家くん霊媒師と知り合いなの?」  ちらりと伊藤さんを見ると既に希望に目を輝かせていた。ダメだ、厄介なこ とになった。出来れば今回は頼りたくなかったが仕方がない。
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