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「霊媒師、というか霊とか呪いとかの類いに強い人を知ってるんだよ。その子を紹介する。けど、ちょっとだけ費用がかかるかもしれないけどいい?」
「やっぱりお金がいるの?」
不安そうな伊藤さんに僕は首を振る。
「お金、というかお菓子が必要なんだ」
「お菓子?」
時澤の方を見るとまた少し笑っていた。こいつはこの状況を面白がっているだけだ。僕は内心ため息をつく。あの人に会うのは結構久しぶりだ。
それから僕たちはきちんと午後の授業も受け、放課後に集合した。なぜか時澤も付いてきたのにはもう突っ込む気力もない。電車で何駅か乗って、しばらく歩く。伊藤さんは僕が連れてきた場所を不安げに見上げた。
「……ここ、なの?」
伊藤さんが訝しげに僕のことを見た。僕はげんなりした顔で頷く。僕たちの中で楽しそうにしているのは時澤だけだ。
「学校、だよね。しかも――」
「私立塀花高等学校。創立三桁を越える伝統校で、自由な校風として有名。多々家、俺たち相当目立ってるが、大丈夫かい?」
「たぶん」
僕はため息をつきながら答える。何人もの女子高生や男子高校生が僕らを怪訝そうに、または、くすくすと笑いながら、通り過ぎていく。僕たちは塀花高校の校門横に立っているのだから当然だ。しかも今は下校時間。通り過ぎる高校生達を見ていると、なんだか眩しく感じる。僕も数年前まで高校生だったのに。やはりみずみずしさというか、若さが全く違うんだろうか。いや僕もまだ若いんだけど。
「すごい見られてるけど……どうして高校なの」
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