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「――あれ? なんだろう、この赤いモヤみたいなの……」
「何かな? ……ん? ちょ、ちょっとこれ、引いてみると人の顔してない!?」
いわばプロとでもいうべき写真部員達が、校内の風景を撮った写真をデータで確認し、写り込んだ不可解なモヤの正体に気づくと愕然と立ち尽くしている……。
それは、写真の画面いっぱいにまで半透明の顔を拡大し、一見、ただのハレーションのように見せかけておいて、その実、離して見ると恐ろしい形相の顔になっているという、最早、感動すら覚える粋でハイセンスな演出なのだ。
ここまでくると、もう誰にでもできるというわけではない。
この大作を生み出すには、ベテランの超・超絶技巧が必要なのはもちろんのこと、体力…いや違うな。精神力? というかなんというか、とにかく莫大なエネルギーをも必要とし、まさに超一流というべき、ごくごく限られた者にしか成しえないものなのである。
わたしを含め、この遊戯に参加している仲間達はこれまでいくつもの工夫を凝らした心霊写真を撮影させてきたが、この名作を前にしてはさすがに脱帽、両手を上げて降参である。
しかし、潔く負けを認めたわたしはふと、今さらながらではあるがある疑問が頭をよぎり、いつもつるんでいる一番仲のよい友達にそのことを尋ねてみる。
「でも、これだけ派手にやってるってのに、なんでみんな、わたし達の仕業だってわからないのかな? とっくにバレててもよさそうなのに……」
「そりゃあまあ、こんなこと生きてる人間にはできない芸当だからね。みんな、死んだ者の霊が写真に写るだなんて、本心じゃ信じてないか、信じてても半信半疑なんだよ」
しかし、彼女の口にした答えはなんとも釈然としないものだった。話をちゃんと聞いていなかったのか、なんだか論点がズレている。
「いや、霊の仕業だと信じてないならなおさらだよ。それに、生きてる人間にはできないって、わたし達こうしてちゃんとできてるよ? なら、みんなだってそう思うんじゃないの?」
だから、わたしは彼女にそう反論したのだったが……。
「ええ!? 今さらそこお?」
彼女はなぜかひどく驚いた顔で、裏返った頓狂な声をあげる。
「そこ? ……そこってどこ?」
「いや、ほんと今さらなんだけど、気づいてないようだから言うけどさあ……あたし達、もうとっくに死んでるよ?」
(心霊写真ごっこ 了)
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