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始まった瞬間
学校に行くと、知らない美人の上級生がチエコを呼んでいると言われた。
あ、チェキ子の本名は「チエコ」と言うのだ。
(何だろう?私、何かしたかな?)
恐る恐る先輩の元へ行く、チェキ子、ではなく、チエコ。
「あ!チエコちゃんだよね!来てくれて、ありがとう!」
先輩の反応は、チエコの思っていたのとは違い、何故か好印象を抱かれているようで、ニコニコ笑顔で迎えてくれた。
「あのぉ、私、何かしましたか?」
小声でまだ、ビビりながら聞くチエコに、先輩は満面の笑みで、こう言った。
「チエコちゃん、写真部に入ってくれない?写真、撮るの好きなんでしょ?」
「え?何で知ってるんですか?」
「だって、チエコちゃん、チェキを持って、いつも写真、撮りまくってたじゃない。写真部の間で、ちょっとした話題になってたんだよ」
(え~!マジで?!)
「今年、写真部には新入部員が一人も入らなくて困ってたの。チエコちゃん、良いでしょ?入るって言って~!」
「でも、私、ちゃんとしたカメラ、持ってないし…」
「大丈夫!カメラは部員には貸し出してくれる事になってるの。それに、みんな、自分のカメラを持ってるから、チエコちゃんは使い放題だよ!」
チエコは少し考えて、こう言った。
「先輩。部員になる代わりに、お願いがあるんですが、良いですか?」
思いきって聞いてみる、チエコ。
「良いよ、何々?何でも言って!」
「え~っと、先輩をモデルに写真を撮らせて頂きたいんですが」
「私を?何で~?まあ、でも、それで写真部に入ってくれるんなら、全然OKだよ!じゃあ、よろしくね!」
そう言って、先輩はずっと手にしていたらしい、入部届けの紙をチエコに手渡した。
チエコが、この時の先輩をモデルに、フォトコンテストで最優秀賞に選ばれるのは、まだまだ先の話。
そして、先輩はチエコがその時に撮った写真がきっかけとなり、売れっ子モデルになるのだが、それはともかく、チエコの新しく刺激的な日々は、今、始まったのだと言う事に、まだ、誰一人、気づいていないのだった。
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