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「本当に行くのか?」
「うん!僕の気持ちは変わらないよ。
必ず、超一流の魔術師になって帰ってくるから待っててね!」
涙ぐむ父親と母親に見送られ、ルディは山道を登って行く…
*
ルディは子供の頃から魔術師に憧れていた。
それがなぜなのかはわからなかったが、「大人になったら魔術師になる!」というのが小さなルディの口癖だった。
しかし、ルディが住んでいたのは、華やかな都会からはうんと離れた片田舎の小さな村。
ルディの家は村一番の貧乏だった。
当然、都会の魔法学校になんて、通える筈もない。
それ以前に、ルディの住む村には魔法学校はおろか、普通の学校すらなかったのだ。
ルディは、読み書きを両親から習った。
計算もごく簡単なものなら出来る程度に勉強した。
「それだけ出来りゃ、どこに行ったって何の心配もいらないぞ!
自信を持て!」
それが、ルディの父親の口癖だった。
だが、村長さんの家にある魔法書を見せてもらった時、ルディはその言葉が真実ではないことを本能的に悟った。
書いてあることの意味がわからないどころか、書いてある文字のほとんどが読めなかったのだから……
家に戻り、ルディが父親にそのことを話すと、父は「専門書というものは簡単なことでも、わざと小難しく書いてあるもので、大人でも読めないものが多い」と、説明した。
(そうか…
だから、読めなかったのか~
でも、いつか、あんな分厚い魔法書もスラスラ読める立派な魔術師になってやるぞ…!
そのためにも、もっともっと勉強しなきゃ…!!)
ルディは決意を強くした。
それにしても、どうすれば魔術師になれるのかと頭を悩ませたルディは、ある日、ついにその方法を発見した。
山の中に住むロディックじいさんに弟子入りすることを決めたのだ。
なぜならば、彼は若い頃、たいそう優れた魔術師だったという噂を聞いたことがあったから。
ただ、それはあくまでも「本人談」で、村の者達もそんな話は信じていなかった。
村の者の話を聞く限りでは、たいしたことはなさそうだとルディも思ったが、残念ながら魔術師を目指すルディが頼れそうな者は、彼の他には誰もいなかった。
(こんな所にいたって進歩はない。
やっぱり、ロディックさんの所に行かなきゃ…!!)
ルディは山奥のロディックの家を目指した。
当時、まだ8歳だったルディにとって、山道を歩くだけでも大変なことだった。
ロディックの家にたどり着くだけで片道3時間程もかかった。
(あぁ、疲れた…
やっと着いた。
ロディックじいさんの家はここだな…!)
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